sun's Projectさんの「バンク・バン・レッスン」と
キャプテンチンパンジーさんの「VOYAGER」を見ました。


「バンク・バン・レッスン」は昔所属していた社会人劇団が
2年程前に上演していまして、(私は既に退団していた)
正式な話ではなく、劇団員から「演出をやらないか」と
役者が降板になった時に「女性銀行員をやらないか」と
打診があった作品なんです。
「演出をやらないか」の時に軽く台本を読んだだけ、なんですが
”凄く難しいな”と思ったんですよ。
だから、今回、高橋いさをさん自身の演出でちゃんと観る事が出来て
嬉しかったです。
とにかく、ラストの役者が順番に立ち上がっていくのはカッコよすぎるでしょう!
って演出だし、
ようするに銀行の防犯訓練の話なんだけど、なんだか胸に残るのは
支店長が、若い男性客(防犯訓練を割と冷静に見ていた)に向かって
銃を向けて「バン」って何回もずーっと言い続けるシーン。
なんで、哀しいんだろう。
それまでは、防犯訓練を逸脱して、迫真の演技をしている人々が可笑しくて
(後ろの席で鼻をすする音がしたので、マジに感動している人も居たみたいなんだけど)
そんなに感動する話じゃないし、心に残る話でもないと思うんだけど
でも、あの「バン」は何を打ち続けていたんだろう、
何を打ちたかったんだろう、
一番冷静で皆の迫真の演技を笑いながら見ていた、若い男は何を象徴しているんだろう
って、kikimimiは考えるのが好きだから、
ついつい、そこに何らかのメッセージを読み取ろうと悩んでしまいました。
(それくらい長く、二人をだけライトで浮かび上がるようにしていた演出だったので。私が演出する事になっていたら、そのシーンの意味を脚本から読み取れていたかどうか…。)


社会人劇団の人達と観に行ったので、彼らは自分たちの芝居との違いなどについてしか
話をしていなかったけどね。
(ちなみに諸事情から、彼らの「バンク・バン・レッスン」は観ていない。)
そう、久しぶりに会った人に「kikimimちゃんだったら、どの役をやりたい?」って聞かれて
考えてなかったから、ビックリしちゃった。
その彼は現在劇団ふるさときゃらばんの塾生になっているくらい、
割と固い会社のサラリーマンなんだけど芝居好きっていうか役者やりたい人。
最近、自分だったら、どの役をやりたいなんて考えて見てなかったから、
ああ、私は役者じゃないんだなぁって痛感したのね。
もちろん、もう舞台に立ちたいとは思ってないんだけど、
なんか、ちょっとショック受けてたの。


でも、一人で「VOYAGER」を観て電車に乗って帰る頃には思い直していた。
だって、自分がやりたいと思う作品じゃないんだもん。
「バンク・バン・レッスン」も「VOYAGER」も。
「非常怪談」の佐衣里とか、お母さんだったらやってみたいけど…。
いっぱい芝居を見てきているから、単純にお客さんとして楽しい作品と
のめり込んで、遣り甲斐があって、やってみたい作品とは、ちゃんと区別しているんだな。


「VOYAGER」はね。再演だったので、そんなに感動しなかった。
あ、でも終わって、かばん持って立ち上がろうとしたら、涙のような鼻水が
ダーッと。
別に「泣くもんか」って堪えていた訳でもないし、寒かった訳でもないけど
でも、心は動いていたのかもね。
初演のときは、かなり泣いたような気がします。
「自分の周りのすべての人を愛しなさい。世界中の人がみんなそうしたら、世界中の人が自分を愛してくれるのよ」
「自分と関わった人は、みんな幸せになって欲しいんだ」
この坪田節が大好きで、ずーっとキャプチンを観ている、坪田氏脚本の作品を
追いかけている訳なんですが
(ハッキリ言うと、脚本としての完成度は、そんなにいい物ではないと思う。SFなので、多分ソコで合わない人も居るだろうし)
今回は、初めて「でも…っ」て思っちゃった。
初演が5年くらい前ですか。
どうも心が純粋でなくなってしまったのか、主人公の言葉がうそ臭く聞こえてしまって。
多分、5年の間にキャラメルの「ブリザード・ミュージック」の再々々演があって
つくづく思っちゃったんですよ。
宮沢賢治の「世界全体が幸福にならない限り、個人の幸福はありえない(でしたっけ?)」
に対して、「ブリザード」のおじいちゃんは言うんだよね。
「一人の人間の力には限りがある。誰か一人、自分以外の誰かたった一人の人を幸せにするのでは、ダメなのだろうか」って。
皆がみんな、誰かたった一人、幸せに出来たら、世界全体が幸福になる…のかな?
っていうか、一人の人を幸福にする事自体がメチャクチャむづかしいし、
幸福って何だろうね。
私も誰か一人でいいから、力になりたい、幸せにしてあげたい、
と思う。


芝居の話からソレちゃったけど、
もちろん、これからも坪田氏には語り続けて欲しい、伝え続けて欲しいテーマだと
思っています。