『ぱぴよん/ぬらりひょん』

http://www8.plala.or.jp/s-douji/
劇団桟敷童子さんの番外編公演『ぱぴよん/ぬらりひょん』を観にいきました。

前回公演もカッパらしき人が出ていたり、
今回は”ぬらりひょん”を登場させたり
劇団名からも、かなり妖怪好きらしい…。


第一部『ぱぴよん〜四畳半からの脱走(スティーブ・マックイーンに勝手に捧ぐ)』
新婚2ヶ月で旦那を交通事故で亡くし、引き篭もりになってしまった泣き虫の主婦が
夫の好きだった映画『パピヨン』のように、妄想で作り出したドガと共に
なんとか四畳半から脱出しようとする話。


私の大好きな女優・板垣桃子さんが、泣き虫な主婦なんだけど
小さな劇場で桃子さんがボロボロ泣いているとこっちも胸が痛いし、演技とは思えない。
でも本当に涙が出たのは、ボロボロ泣いているシーンではなく、
淡々と夫との思い出を語るシーン。
番外公演といっても、手を抜かずに美術が綺麗だった。


話の中で何度も映画『パピヨン』の名シーンや名セリフをドガと共に再現してくれるのですが
私は『パピヨン』を観ていないので、これは帰って観ないと面白さが半減だわ…
と思っていたら、休憩時間(二部への舞台転換中)に
舞台上手にあるTVで芝居で使ったシーンだけを編集した『パピヨン』を流してくれたのです。
芝居の中で、主婦が言うんですよ。
パピヨンは、一人で脱出するんじゃない。映画のスタッフと一緒に脱出するんだー」
ラスト、大海原に浮き輪に乗ったパピヨンの姿のシーンで
浮き輪の下に潜っているスタッフの姿がハッキリクッキリ映っているんです。
(これって映画好きには有名な話?)
皆でそのシーンを見て「ホントだぁ」と大笑いしました。
客席に不思議な連帯感が生まれた瞬間でした。


第二部『ぬらりひょん〜向日葵畑の幻(ある夏の夕暮れ--断片的で不連続な僕の追想、または妄想)』
「その夏、僕は不純異性交遊に明け暮れていました」というセリフから始まる追想
副題についているように断片的に順不同に出て来るシーンに
ちょっと頭が混乱してしまいましたが、
一部と共通するのは、大切な人の死をどう乗り越えていくか
ということです。


ぬらりひょん”は主人公が小学生の時に何故だか自宅に火を付けた時に
作り出した幻の少年。
「ずっと君の事を忘れていたよ」と話しかけるのですが
ぬらりひょん”の事を思い出した事がどういうことなのか
未だによく判っていません。
その”ぬらりひょん”は「がんばれ」と手を振ってくれるんですけどね。
罪悪感が”ぬらりひょん”だったのかなぁ?
もう一回観ないと、この話は私には難しく消化不良です。


でも、桑原勝行さん扮する”僕”と川原洋子さん扮する”早苗”が
自転車に乗って、坂を上ったり、下ったり、
麦藁帽子が飛んでいきそうになったり、線香花火したり、
芸が細かくて、夏の匂いと切なさ(刹那さ)を感じられる舞台でした。