『燃えつきるまで』

燃えつきるまで (幻冬舎文庫)

燃えつきるまで (幻冬舎文庫)

唯川恵さんの『燃えつきるまで』を読みました。
文庫本の裏表紙に"5年付き合った彼氏と別れた31歳のキャリア女性の絶望から再生までの物語"と書いてある。唯川恵さんの作品は読み易くて嫌いではないけど、この内容は(3月に彼氏と別れたばかりなので)今はちょっと触手が働かないなぁと思いながらも、せっかく友達が貸してくれたので読み出した。


読み始めて、やっぱり痛い。結婚も考えていた彼氏に突然「別れよう」と言われて、納得できなくて、すがりつくのはプライドが許さなくて。少し期間を置けば「やっぱりお前が一番だ」と戻ってくるだろうと踏んで、電話したくても我慢して…。そんなヒロインの心の動きが分かりすぎるから、辛い。
彼女・怜子の場合は、結局プライド捨ててすがりついても、無理矢理ホテルに連れ込んでも元には戻らず、それまで頑張ってきた仕事でもミスを連発し、精神的に追い詰められていってしまう。


ついつい、自分と怜子を比べてしまう。私はそんなみっともないマネはしなかった。そこまで精神的に追い詰められなかった、と思う。自分より惨めな主人公が居ることで、救われたような、救われないような(想いの深さを比べられるような)複雑な気持ち。
ちなみに怜子自身も婚約破棄された可哀想な知人を知り、それよりはマシと思う下りがある。自分より不幸な人の存在に救われるなんて、嫌な心の動きだけれど。


怜子の場合、5年も付き合っていたのに「生き方が違うと感じた」と別れを切り出されたのだから、相当ショックだったと思う。具体的な理由があれば、納得できる(可能性が高い)のに。
その上、彼は早々に恋人を作り、その恋人が自分と同じタイプの(バツイチ、年上)女。全く違うタイプの女性と付き合ってくれれば、これまたショックの度合いが違うのに。
ムカつくのが、彼の恋人の話などを事細かにメールで教えてくれる女友達。親切顔よそおって、「私はあなたの味方よ」なんてフリをして、怜子の精神を追い詰めていくのだからタチが悪い。とりあえず、私の友達にはそんな性悪な女が居ないことを誇りに思ったわ!


後半、怜子がストーカーまがいの行動に出始めたときには、思いっきり引いてしまいました。タイトルどおり、自分の彼に対する執着が『燃えつきるまで』とことん行動して、そして憑き物が落ちたようにストンと吹っ切れる怜子。それまでの代償に会社ではチーフの座を追われ、出向が決まってしまったけれど、玲子は後輩に言う

「頑張れば、すべてのことは報われると思っていた。
 でも、そうじゃなかった。頑張っても仕事は失敗するし、
 失恋して我を忘れることもあるのね。でもね、だからこそ、
 やっぱり頑張るしかないんだっていう気もしてるの」

それに対して後輩が

「あの、私は結構、頑張るって好きです。
 ちょっとかっこ悪いような気がしてあまり口には出しませんけど。
 頑張るのをやめたら楽になるのかもしれないけれど」

と言うシーンで涙ポロリ。


「頑張る」って、私も口癖なんだよね。何かあると「うん。頑張るよ。」と言ってしまう私に「頑張る」という言葉が嫌いな彼が、よく注意してた。他人に「頑張れ」とは言わないようにしているし、「頑張る」という言葉にいい印象を持っていない人もいっぱい居るのは知っている。だけど、自分で自分に「がんばれ」って言ってあげないと私は生きていけないと思う。


そしてそして、最後にちゃんと彼氏に「一緒に過ごせて楽しかった。ありがとう」と言える怜子。やばい、電車の中じゃなければ、号泣していたかも。
私もちゃんと「ありがとう」って言えたよ。これまでもちゃんと言ってきたよ。恋の終わりは、いつも「ありがとう」で締めくくりたい。


P.S 別れたら、合鍵は速攻返してもらうか、早急に鍵を付け替えないとダメね。恋人だった人を疑うのは嫌だけど、失恋は人間を変える。鍵を持っているから、良からぬ行動をしてしまうんだよね、と学習いたしました。