「夢も噺も〜三笑亭夢楽の道〜」

夢も噺も

劇団ブルースタクシー入江謙舟プロデュース 
「夢も噺も〜落語家三笑亭夢楽の道〜」を観ました。 
 
芝居の前に江戸更紗や染物の紹介があって 
かなり心動かされる私。 
染物も楽しそうだよなあ。 
中学の家庭科でろうけつ染しかやったことないけど…。 
 
それから、劇中歌などを作った方の三味線演奏。 
三味線の演奏って初めてちゃんと聞きました。 
以前、たまたまブレイク前の吉田兄弟の弟君の津軽三味線を 
生で聞く機会があったんですけど 
津軽三味線に比べると三味線も音も華奢なんですね。 
女性の楽器って感じがしました。 
私は津軽三味線の心ごと持って行かれそうな激しさが好きだな。 
 
で、お芝居なんですが 
元々は映像用に書かれた脚本だったと言う事で 
映像で観たかったなぁ、というのが感想。 
暗転が多くて、時間の流れもシーンの転換も映像向きだったと思うんです。 
舞台も悪くなかったんだけど、映像の綺麗な処理で観たかった部分もあって…。 
暗転は長かったんですけど 
暗転に入る前、役者のストップモーション、 
照明がゆっくりフェードアウトしていく様 
完全暗転の時間というのがですね、凄く計算されていて心地よかった。 
基本的に演劇の暗転が嫌いな私ですが 
ここの演出の暗転は、長くてもそれだけの時間が居るというか 
ストーリーと、お客さん側が色々と暗転中に登場人物の想いに 
考え廻らせるだけの時間として、ちょうど良かったんです。 
本当に心地よかった。 
こんな暗転なら許せます。 
でも、やっぱりかなり芝居を長く感じさせるのと 
人によっては退屈に感じる場合もあるかもしれない。 
 
ストーリーはですね。 
三笑亭夢楽が自分の夢と理想を追い、師匠に破門され 
挫折しようとするのを1人の女性(みね)が支え続ける話で 
女遊びは芸の肥やしって言うじゃないですか 
本当は嫌だけど、あなたが落語家として大成する為なら 
何処へ行こうと何も言わない。 
食えない間は、私が体を使っても食わせてあげる。 
そんな女性(みね)の話で、どんどんすれ違っていく二人の姿と演出に 
私はまたまた「コレぐらいじゃ、泣かないぞ!」っと思っていたんだけど、 
みねの最期のシーンと夢楽の哀しさを乗り越えて噺をしている姿に 
「踊る〜」より泣きそうになって、グッと堪えたら 
鼻水が出てしまいました。 
(涙を堪えると、鼻水が出てくるのは、とにかく体から水分を出したい 
 と言う事なんですかね?) 
 
脚本は女性が書いているので、パンフに 
こんな女性をどう思うか?愚かだと思うか?と記載されていたけど 
どうなんでしょう?これだけ惚れられる、才能を信じられる男に出会えて 
みねは幸せだったと思うんですよね。 
あ、脚本家と同じ意見になってしまった(^^ゞ 
と言う事は、脚本家の女性も私と同じ 
そんなメチャクチャ尽くす恋愛に憧れながらも 
自分が傷付くのを一番怖れて、知らずに損得勘定が働いたりして 
恋愛には溺れない女性なんですかね…。 
 
みね役のわかばやしめぐみさんは 
イエロードロップスの役者さんなので、4,5年前から 
知っているけど、今回初めて凄く素敵だと思いました。 
田舎から出てきたばっかりの元気いっぱいのみねから 
どんどん苦労してやつれていくみねまで見事でした。 
 
落語家役の方々には、自分が落語塾に入っているせいもあり 
ちょっとダメ出ししたくなる部分もあったんですが 
(多分、夢楽役の方を引き立たせる為にも、ワザと下手に演じていた部分も 
 あるとは思うんですが) 
夢楽役の足達洋介さんカッコ良かった。 
いや、理想を追う夢楽の姿に私もみねと一緒に惚れて観てました。 
甘城美典さんの花魁が妖しくて綺麗だった。 
二役で女中のおたま役との変わり様にビックリ(女は化ける) 
 
そう、夢楽が吉原に通うシーンやみねが体を売るシーンが 
結構あるので、演出が見えそうで見えない色っぽいシーン作りに 
拘ったのも良く判るんですよね。 
ドキドキしちゃいました。 
 
夢楽はただ笑えるばかりの噺ではなく、 
人の心に残る噺をしたいという夢を頂いて居たんだだけど 
私も人の心に残る噺や芝居の方が好き。 
でも何にも考えないで、頭カラッポにして楽しめる 
ただ笑える噺も芝居も必要だよね。 
寄席に行くと、どっちもあっるのがいい。