「贋作少年」

贋作少年

劇団桟敷童子さんの「贋作少年」を見に行きました。 
BBSの「11月の観劇予定」には含まれていなかったんですが 
「えんげきのぺーじ」というHPのメルマガを取っていまして 
(芝居を観た人の1行レビューがメールで配信されてきます) 
ソコで評判が良かったのと 
今年始めに見て、唯一★5つ付けているギリギリボーイズ30-deluxの 
「Maya-k」でヒロイン・マヤ役を演じていた板垣桃子さんが 
所属している劇団なので、一度観たい劇団さんだったんです。 
それでフラフラっと…。 
 
そしてチラシですが、かなり前から折り込みチラシで 
観ていましたが、印象的な絵ですよね。 
でも、なんか怖くてチラシだけでは、足を運ばなかったなあ…。 
 
お話は、三井三池炭坑の爆発事件が起こった翌1964年。 
石炭運搬船が勝手に航行し、漁船にぶつかる事件が起こる。 
その船には、少年が一人だけ乗っていた。 
少年一人では動かせない船が何故勝手に動いたのか、 
そして、その事件の前に少年と関係があった人間が4人死んでいる。 
二つの事件は関係があるのか!? 
少年が語る贋作少年とは!? 
「もう一人のぼく。幻の少年。偽者の少年。贋作少年」 
 
第1部では、先に述べた事件のあらましや少年の生立ちを 
刑事2人と少年を保護した児童福祉の職員と小学校の担任教師が 
話している大人の視点でのストーリー。 
第2部では、事件を起すまでの少年の視点で描かれたストーリー。 
上手い作り方なんですよ。 
 
第1部では大人4人が少年が”人を殺したのか”という事について 
シリアスに語り合っているんですけど 
第2部では、高度成長期の日本のとある港町の喧騒と活気が 
テンポ良く展開されて、ヘンなダンスがあるし、 
ザリガニの着ぐるみを着た人は出てくるし、、、笑えます。 
 
劇場に入った瞬間から、いや劇団名から、そうなのかもしれないけど 
久しぶりにアングラ劇団に出会ったなって思いました。 
もちろん、作品が1964年の設定もあるから 
余計にそう思ったのかもしれないけど。 
サザンの曲に合わせて、カニのようなダンスを始めたときには 
ビックリしたし、笑えたんだけど、周りが笑っているように感じられなくて 
可笑しいのは自分だけ!?かと思ってしまいました。 
この時点で、少年王者舘っぽいなって思いました。 
下町の喧騒の中、走り回る少年達を見ていると維新派を彷彿させられました。 
多分、演出家さんは、両劇団を当然知っている方だと思いました。 
アンケートに「都内の空き地情報を知っていたら教えて下さい」と 
記載されていて、ああ、維新派のように劇場じゃないところで 
芝居をやりたいんだなぁと思いました。 
 
「えんげきのぺーじ」の1行レビューには 
たまに関係者のヤラセもあるようなんですが、 
今回は本当に良かったです。 
 
お目当ての板垣さんが、贋作少年役で、 
ちょこっとしか出てこないのが残念だったんだけど 
初めて本当に主人公の少年の前に登場するシーンでは 
度肝を抜かれました。 
壁にほぼ90℃垂直に立っていたんですよ。 
はじめ、鏡か何かに映っているのかと思ってしまったくらい。 
ワイヤーで、上半身吊っていたんだと思うけど、 
少年が悪い事をして、言い逃れをする時にウソで作った少年が 
本当に登場するシーン。 
天井近くの壁に垂直に立った姿から、ゆっくり歩いてきて 
少年の目の前に立つのに相応しい素晴らしい演出。 
 
それから、ラストシーン。 
たった一人で、いや贋作少年と二人で船を動かし 
海へ向かった少年が、海の中で一人踊っているシーンでは 
水槽と照明を効果的に使って、本当に幻想的な海の底に居るようでした。 
しばらく忘れられそうに無いですね。。。 
 
それから、少年が放尿するシーンがあるんですが 
もちろん少年は女性が演じている訳で 
客席に背を向けて、放尿の動作をしながら、 
顔だけ振りむいて、説明をしてくれるのね。 
友達と競争をしている。一番遠くまで飛ばせるのはどっちかって。 
風を待って、放尿する時の爽快感を語ってくれるんだけど 
その冒頭シーンにこの話の一番の言いた事は 
全て詰めこまれていたのかも知れないと今、思い出しています。 
演じている竹内奈美さんの演技も上手くて 
本当に”している”みたいだし 
自分はやったことない、出来ない女の私にも 
その爽快感が伝わってくるの。 
風に乗って遠く遠く放物線を描いて、飛んでいく−−−。 
少年の持っている輝かしい未来とか、力を感じた。 
 
少年は三池炭坑の事故で父を亡くし、 
病弱だった母親も亡くなった時に現実を受け止められなくて 
母はまだ入院している。母を助ける為にお金が居ると思って 
違法行為にあたる事をしながら働き 
そこで知り合った初めてのたった一人の親友ドロガメの為に 
幻の少年を作りだし、本当に犯罪を犯し 
そして、その親友ドロガメが死んだ時に 
(ドロガメの死は事故だったんだけど)そのような状況に 
追いこんだ大人達を同じ目に合わせる事を誓う。 
そこで本当に贋作少年が目の前に現れるんだけどね。 
少年犯罪が取り沙汰される昨今なので、色々考えてしまいました。 
(この話は「青い炎」のように、犯罪を犯す少年に 
 感情移入してしまうんですけど。) 
 
それから、多分私が女だからだと思うけど 
ドロガメの母ヨシミに対して、妙に興味を覚え、哀しく感じた。 
男が居ないと生きていけない女で、 
男と居る為に、子供が邪魔で自分の子を遠ざけて 
依存している男はヤクザで、何かあると殴られて…。 
 
ドロガメがお金があれば、母ちゃんが戻ってくると思って 
必死でお金を貯めて、しまいには盗みを働いて 
金メダルを持ってやってくるんだけど 
金メッキでちっともお金にならなくて、そんなドロガメを 
バカにして笑うの。笑いが止まらないの。 
「笑わないとやってられない」って。 
 
ドロガメの本当の父親はそのヤクザだったのに 
その真実さえも、ドロガメがそのヤクザを刺すまで 
ずーっと黙っていたヨシミ。 
笑いながら、真実を言うヨシミ。 
何を考えていたんだろう。どうして、そうなっちゃったんだろう。 
でも、笑いながら哀しんでいた気がするんだよね。 
ドロガメが自分のためにお金を稼ごうとしていた気持ちも 
本当は伝わっていて、でもソレを素直に喜べる性格の人ではなかったんだと思う。 
そんな気がした。 
ヨシミ役の川原洋子さんは綺麗な人でしたね。 
60年代ファッションをしているのが、似合っていた。 
山口百恵っぽかったです。 
 
他にもいい役者さんが揃っていて、お勧め劇団です。 
ずーっと、この路線なのか、次回作も気になります。 
 
話は変わりますが、30-deluxを立ち上げたキャラメルボックスの 
佐藤仁志さんが、夏の公演でキャラメルを退団されていたそうです。 
中村亮子さんも) 
今日加藤プロデューサーの日記で知りました。 
キャラメル以外でユニットとか立ち上げちゃうと 
どうしても退団しそうな雰囲気が漂っちゃうんですよね。 
キャラメル退団は残念だけど 
来春の30-deluxの公演で佐藤君には会えるから平気。 
30-delux気に入っているし…期待しているし。 
中亮はねえ。。。またどっかで会えるのかしら? 
ご結婚とか、めでたい話だったら嬉しいんだけど…。