「裸の劇場」

桃唄309の「おやすみ、おじさん」と 
ジャブジャブサーキットの「裸の劇場」を観劇しました。 
で、今日は「裸の劇場」について 
K氏への観劇感想メールという形で書いてみたいと思う。 
 
初日27(木)と29(土)の2回観に行きました。 
やっぱり2回観て正解。 
スッキリしました。 
初日はPさんを連れて行ったんです。 
Pさんには「私が岐阜まで追いかける劇団です」とか 
「岐阜に引っ越して”劇団員にしてくれ”って言おうかと思ったくらい好き」 
とか、それから「推理小説みたいな芝居をする」って説明していたんです。 
そしたら「殺人とか起こるの?」と聞かれてしまって…。 
そうですよね。”推理小説”みたいなのって言ったら 
殺人事件とか、探偵とか刑事とか、そっちを想像してしまいますよね。 
そうじゃなくて、とにかく最初の説明が少なくて 
この人とこの人がどういう関係なのか、何が起こっているのか 
ひたすら推理しながら見ている芝居なんですよって説明したんです。 
 
そしたら、今回の作品なんですが、 
死体じゃなくて、行方不明の女優とか刑事さんが登場して 
見事に推理物なんですよ…。 
もちろん、2時間ドラマサスペンスなんて作りじゃなくて 
JJCならではの推理物になっていたんですけど…。 
 
STORY 
<シーン1> 
取り壊しの決まった劇場に突然、破格の金額で2日間だけ 
劇場を貸してくれって言う劇団が現れる。 
劇場の支配人は何の為に劇場を使うのかいぶかしんでいるが 
照明プランナーさんが、照明家・楡原さんだったので安心して 
劇場を貸す事になる。 
 
<シーン2> 
暗転ののち、劇場は何やら芝居のオーディションの控え室となっている。 
有名な演出家が何故かオーディション席に居ないという。 
個人面談が全員終わらないうちに何らかの事情で 
プロデューサーやゲスト審査員が控え室に現れて、集団面接が始まる。 
ある事件現場の図面が渡されて、ある事件を推理して欲しいと言う内容だ。 
日時は3週間前の三次オーディションの日。 
倒れていた人間が手にしていたのは、「●3」 
(十の位はインクが滲んで読めない)という番号札。 
四次オーディションに来ていたのは全て受験番号の一の位が「3」の人々。 
「その倒れていた人って、ここにいない演出家!?」 
そう思い始めた時に一人の役者が「全て判った」と言い出す。 
もしかして演出家が殺されるか教われるかして、 
自分達が容疑者と思われている、そう思わせたのは演出で、 
その反応もオーディションの一環。 
演出家はどこか別室でモニターを観ている筈だと。 
拍手をしながら演出家が現れて、謎を解いた役者だけが残される。 
てっきり自分がオーディションで選ばれたと思っていた彼だが 
あと2人、候補が残っていると聞いた時に 
その二人が、控え室で演出家の悪口を言っていた事を告げ口する。 
そこで、オーディションは終わり。 
「芝居はアンサンブルです。仲間を蹴落とすような役者は要りません」 
演出家に冷たく言われ、「覚えてろよ」という捨てセリフと共に出ていく役者。 
すると「お疲れ様」と楽屋から現れる他のオーディション受験者たち。 
オーディションである役を演じる役者を探しているのは本当だが 
他の受験者は、劇団員がダミーを演じていたのだった。 
劇団員が打ち上げの会場へ移動して、演出家一人が取り残されると 
本物の受験者の知り合いだった女優がやってくる。 
今回のオーディションは彼女の頼みで、彼への復讐劇も含まれていたのだった。 
「人を試すって、あんまり気分の良くないものでしょ。相手を欺いた時点で 
 自分も同じ土俵に立ってしまうからね」 
「オーディションで選ばれた物は、落とされた人々の恨みを背負い 
 その人達を納得させるだけのいい芝居をしなければ、いけない。 
 舞台に立てるのはそんなパワーが必要なんだ」 
 
<シーン3> 
「おつかれさま」と楽屋、照明/音響室から出てくる役者たち。 
さっき怒って帰っていった役者も舞台監督として登場する。 
「今後の予定と台本の差し替えです」 
役者は次の舞台の着替えを始め、照明さんが照明合わせをし 
搬入口からは送風機が運ばれてくる。 
舞台上は、枯葉に見立てた紙くずとテーブル、イス、パラソルが設置されてゆく。 
 
<シーン4> 
波音と送風機が回る音の中、男が座っている。 
そこへ刑事がやってくる。 
ある女優の失踪事件について 
最後に女優と一緒に居た人物で最終力容疑者の男(職業/劇作家)に 
話を聞くため、である。 
今回は犯罪プロファイリングの刑事が一緒に来て、失踪時の話をしてもらう。 
途中、女優の名前が出た時と女優の日記に残されていた「M.S」という 
イニシャルと場所を表す「D-3」という単語が出た時に 
劇作家役の役者が動揺を見せ、自分の台本をチェックする。 
 
<シーン5> 
「お疲れ様」と登場する役者たち。 
モニターで2作品とも観ていたという劇場の支配人もやってくる。 
2本目で劇作家役を演じていた役者・堂本は皆の台本と自分の台本だけが 
違う事を確認し、劇場を飛び出して行ってしまう。 
他にも恋する男が突然何かを思い立ち飛び出していったり 
姿の見えない役者も居るが、ディスカッションを始めてしまう。 
この2作品は劇作家・若山が描いた作品で、突然、今回の演出家・高坂の元へ 
郵送されてきた事。若山は郵送の2日後にガンで亡くなっていた事。 
1作目は「オーディション殺人事件」といって 
大学生時代に上演したものであり、その当時のメンバーを何人か集めての 
弔いの芝居であったこと。 
だが、2作品目は未発表で、劇作家自身が実名で登場し 
また失踪している女優も「オーディション殺人事件」で 
一緒に芝居をした女優の実名であり、本当に6年前に失踪していること。 
皆で台本にある「M.S」の謎を解きたいと思っている事−−−−。 
そこへ堂本が酒を飲みながら戻ってくる。 
「オーディション殺人事件」の登場人物で「M.S」に該当するのは 
自分が演じていた役名だけであること。 
始めから、自分を試すために企画し、ワザと違う台本を渡したのではないか、と。 
堂本と高坂の激しいやりとりがあって、二人とも一旦出ていってしまう。 
残された人々は途方にくれ、一旦お開きとなる。 
「なんだか、これでやっと劇場を閉められそうです」 
という支配人の言葉を残して。 
 
<シーン6> 
真っ暗な誰もいない劇場に誰かが懐中電灯を持ってやってくる。 
そして、照明バトンをチェックしはじめる。 
「もう何もありませんよ」と堂本がランタンを持って立っている。 
侵入者は劇場の支配人だった。 
支配人の本名は「湊春彦(ミナトシュンゲン)」=M.S。 
「D-3」は、照明バトンを示していた。 
そして、そこにあったのは失踪した女優と劇作家若山と三人で映っている 
支配人の写真であった。 
薄暗い中、一人で支配人と対峙していた堂本が 
「もう勘弁してくださいよ。出てきてくださいよ」と言うと 
劇場の明かりが点き、高坂と照明の楡原が出てくる。 
はじめから、支配人をターゲットに2本の芝居を上演していたこと。 
高坂は自分のもう1つの職業が弁護士であり、時効が過ぎている事 
ただ真実が知りたいだけであることを支配人に説明する。 
ほとんど真実であった2話目の台本の中で、劇作家に惚れて 
身の回りの世話をし、女優の失踪事件を撹乱させるためのトリックに手を貸し 
「大学に戻ろうかと思います」「法学部だったけ」と会話して去った女性。 
そして劇作家に何があっても私は弁護し続けます、一生黙っていますと 
言っていた女性。 
その女性が、本当に弁護士になり、支配人に同じように 
「何かあったら私が弁護します」と言うのだった。 
支配人が真実を語り出す。 
精神的に脆かった女優・琴音は、劇作家との恋も上手く行かず 
何かあると支配人の所へ遊びにきていた。 
そこで劇場の鍵を彼女に渡していたところ、舞台の上で 
衣裳の真っ赤なドレスを着て、おそらく薬を飲んで息絶えていた。 
支配人は、その姿が美しくて、誰にも触らせたくなくて 
ずーっと、ただ見ていた。 
そうしているうちにドンドン警察へ連絡できなくなってきているのを 
知っていて、それでもただ見ていた。 
そうしたら、若村がやってきて、舞台を見て、何も言わず、 
うなずいて去って行った。 
それから全く連絡も取っていないし、会っていない。 
告白して「6年分眠れそうだ」という支配人に話しかける高坂。 
「でも来週の学生演劇の面倒をちゃんと見て下さいね。 
 若村民子の舞台デビューなんです。父の弔いを立派にすませ、 
 面影までそっくりで」 
支配人が去った後、まだ女優・琴音の行方に合点がいかない堂本。 
「6年前、この劇場改装しているのよ。雇われ支配人だからね。 
 取り壊しを出来るだけ引き伸ばして、決まったらサッサと居なくなる 
 つもりだったんでしょう。会いたくないでしょ。 
 自分が埋めたものとの再会なんて」 
堂本と楡原も去り、舞台上には高坂ひとりテーブルにつっぷして眠っている。 
ふと目覚めると、真っ赤なドレスを着た女が座っている。 
高坂は懐かしそうに微笑んで、彼女にもワインを告いでやるのだったーー。 
 
というような話でね。 
(いやあ、読み返したら、シーン1では簡単な説明というか語り口調だったのに 
 段々かなり思い入れたっぷりにストーリーを書いてしまいましたね) 
とにかく、何処からが芝居で、何処からが本当なのか 
かなり入り組んだ構造の内容になっていて、 
Pさん曰く「ただの点だったのが見事に線になって良かった」と 
(JJCの芝居はいつもソウなんだけど) 
「おお、そうだったのか!」って面白かったけど 
2時間ずーっと、(笑えるシーンもあるけど)固唾を呑んで 
一言もセリフを聞き漏らさないようにして、推理と整理をするのに 
疲れてしまって…。 
初めてのJJC体験にはふさわしくなかったかなあ、 
私としては「非常階段」とか「中野エスパーの冒険」とか「図書館奇譚」 
とかを、JJC初心者には勧めたいんですけどね。 
「ダブルフェイク」くらい、疲れました。 
ちょっと「もう1回観るのは、また疲れるかなー」って珍しく躊躇したんですが 
観たら、色々な点がスッキリして、、、 
そうそう、上記のあらすじでは端折っちゃったけど、 
若村と琴音さんの娘・民子さんなんだけど、「オーディション殺人事件」で 
琴音さんが演じていた役で出ている設定なんですよ。 
皆、若村の娘とは知ってなかったんだけど。 
照明の楡原さんと高坂さんだけ、知っていて、 
2話目の小道具で「カチカチ蝉」が出てくるんですけど 
それをね<シーン3>の時に「懐かしくて。よく使っていたんです」 
「長野の両親がなんか違うなーって思っていた時に、 
 私にとって特別なおじさんだったんです」という会話をしているんだけど 
何の話なのか、誰のコトを言っているのか、全く観客には判らないですものね。 
2回目で、スッキリ。 
支配人の感情の動きとか、高坂さんの心の動きとか細かい所まで 
行き届いていて観る事が出来て、 
改めてはせワールドにどっぷり浸かって、大好きだわって(*^^*) 
 
2回観ないと理解出来ない芝居なんて、困るって以前キャラメルの 
「ナツヤスミ語辞典」の件で日記にぼやいていたんだけど 
JJCは2回観ないと判らないところが好きなんだなって。 
常にはせさんに挑戦されている気もするけどね。 
「ついて来れるかな」「この伏線に気付くかな」って。 
 
そうそう、2回目の一番スッキリ!!は 
最後の琴音の幽霊の登場シーンなんですが、6年前に改装して 
潰してしまった舞台袖の出入り口なんですよ。 
冒頭のシーンから、高坂が支配人に「ここは何だったんですか?」 
って聞いてわざわざ出入り口は無いんだって事を説明させいて 
しかも高坂が「あるいは入って来れないように塞いだ」と 
言わせているんですよね。 
「何がですか」 
「先住民ですよ。この周りの」 
って、この会話は、シアターグリーンの周りがお墓ばっかりなコトを 
揶揄しての物だと思っていたのに、最後に本当に幽霊の登場口に使うなんて 
心憎い演出ではないですか!! 
もしかしたら、1回観て気付いていた人も居るのかもしれないけど 
私は2回目で大発見した気分で居ます。 
Pさんに教えてあげないと。 
そうだ!今日一緒に見たS君にもせっかくの大発見を言い忘れていた(^^ゞ 
 
Kさんには、いつもお土産を頂いていて、申し訳ないと思っていたので 
今回の台本をKさん用に購入しました。 
住所を教えていただければ郵送しますが、今度東京へいらした時に 
手渡しの方がいいですか? 
タイタニック・ポーカー」の台本は『テアトロ9月号』に掲載されています。 
本屋を探して観てください。 
そうそう、1月にグリーンで「非常怪談」を上演するじゃないですか。 
チラシの写真で気付かなかったんですけど「桑名しのぶ」さんって 
「一色しのぶ」さんの改名した芸名なんですって!! 
(気付いてました?) 
一色さん、また同じ役なのかなあ。楽しみが2倍になった気分です。 
 
それでは、またメールしますね。 
頑張って「非常怪談」には出張の用事を作ってください。 
 
ちなみにはせさんと仲のいい長谷川さん(桃唄309)の 
「おやすみ、おじさん」も面白かったので、もう1回観たいんだけど 
明日は、なんと落語塾に朝日新聞の取材が入るんだって。 
発表会のリハーサルで、着物着て行かなくちゃいけないし、大変。