「VERSUS死闘編〜最後の銃弾〜」

VERSUS

劇団ショーマさんの芝居を物凄く久しぶりに観に行きました。
http://www.interq.or.jp/kanto/fumi/showma/
ええ、10年くらい前の「アメリカの夜」以来です。
その間、他の劇団がやる高橋いさをの作品は
結構観ているんですけどね。
久しぶりに観てみようかな?って思ったのは
一時全く名前を聞かなくなって解散するのかと
思っていたショーマが近年新しく活動している様子があるのと
知人から、久しぶりに観に行って良かったと聞いたこと。
池袋シアターグリーンであるし、時間があったら行ってみるか、
とそんな感じでいましたら、
ネットで「Vシネマみたいだった」という感想があって
Vシネマって観た事が無いけど、あんまりいい出来じゃないって
ことなのかと心配していたんですよ。
たしかにタイトルから解るように、ドンパチする話ですけど
皆カッコ良くて、ちゃんと芝居ならでは、の演出があり
最後は、感動しました。


順を追って話すと、劇場へ入ると舞台上に大きな鏡があって
客席が映っているんですよ。
その昔、寺山修司が『観客』という芝居を打って
舞台上にデカイ鏡があって、映った客席を見せて終わりだった
という逸話を思い出しました。
芝居が始まると、その鏡は牢獄のドアに塞がれて見えなくなります。
で、明日刑期が終わって出ていく老囚人と
入ってきたばかりの若い囚人がいて
若い囚人は「あっちの世界には戻りたくない。怖い所だ」と
どうして、刑務所に入る事になったのかを話し始めるんです。
違法なカジノの売上金を奪おうとする自衛隊上がりの強奪犯や
強奪犯に手引きをしていて、実は裏切っているカジノの支配人に
カジノの用心棒。カジノのボスの愛人。
カジノの支配人とつるんでいる警察官
それから以前に支配人に裏切られたヤツらが復讐にやってきて、
と、この辺がVシネマなんですけど
若い囚人の回想となっているから、時々老囚人が出てきて
チャチャを入れたりするのが、演劇的で楽しく笑わせてくれます。
で、皆悪い事をやって、バカばっかりなんだけど
男たちが物凄くカッコいいんですよ。
ホント全員違法行為をしている人達だから
「カッコいい」なんて思っちゃダメだって思うんだけど
(拳銃ぶっぱなすのを"カッコいい"なんて思っちゃダメだと
 思うんだけど)
「死ぬ」って解っていても、仲間を助ける為に
または殺された仲間の為に闘いに行く姿がカッコいいんですよ。
(本当にカッコいいのは、家族の為に頑張って働いている
 お父さんだったりするんだぞ!!って思いながら)


で、若い囚人だけが、実は闘いが嫌いで
怖がって、隅で震えていたら、全員死んで生き残っちゃって
で、ヤクザの愛人(元は自分の恋人)に会いに行くと
すべてを知っている彼女が怒るの。
「あんたは、自分は誰も傷付けていない。誰かを傷付けた奴らより
 自分はマシだと思っているんでしょ。
 あんたは逃げているだけよ。
 自分の欲望の為に、命はれるあいつらの方が数倍マシよ。
 闘いなさいよ、男でしょ」
と殴るんです。
その話しを聞いていた老囚人にも、そのセリフは凄く効いて
「いい話しを聞いた」と呟くんです。
そして、若い囚人の「ココを出たら、何をするんですか」
という質問に、しばらく間があって「闘いに行くんだよ」
そこで、朝になっていて、点呼が始まり
二人は牢屋(?)の扉前に座るのね。
そしたら、そのドアが開いて、鏡が現れて、
そこに客席が映っているんですよ。
塀の外の、一生懸命闘って生きている私達が!!


クリスマスの設定だったので、
クリスマスソングが高らかに鳴り響く中、
自分達が鏡に映っているのが、なんとも言えなくて。
クリスマスソングが応援歌に聞こえるんですよ。
「ちゃんと生きる」ということは「死ぬまで闘う」って
コトなんだなあって。がんばろうって思った。
ドンパチだけの作品だったら、そんなに感動しないんだけど
いさをさんも私と同じ想いなんだなって。
アウトローの拳銃アクション物って、映画やドラマでは
カッコよくて憧れるかもしれないけど
本当にカッコイイのは、普通に頑張って生きている人たちなんだよ
って想いがこめられていると自分では思っています。


役者さんも本当に皆カッコ良くてね。
とにかく一番は山本満太さんでしょう。
冒頭から、凄くいい演技で、若い囚人役の岡本勲さんも
ほぼ出ずっぱりで頑張っていたし、上手いと思うけど
やっぱり山本満太さんが相手役で引き出した部分も
多いんだろうなって思いました。
冒頭から、セリフに込められた想いとかが、凄く深いというか
味わいがあるっていうか…。
愛人役の南口奈々絵さんが言う「闘いなさいよ」のくだりの
セリフもいいんだけど、やっぱり回想シーンが終わって
山本満太さんが同じセリフを言うところで涙出ましたからね。
本当にいい芝居をするなぁ。


で、もう1つ特筆すべきは、絶対王様の有川マコト氏が
客演されていて、今回見に行こうと思った理由の一つなんだけど
カジノの支配人役でした。
もう一番悪いヤツなんですよ。すっごい嫌なヤツで
しばらく有川さんだと気がつかなかった。
今まで、いい人の役ばかりみていて、本当にこの人、
いい兄ちゃんなんだろうなぁって思う人だったんですが
見事に別人でした。
知っている役者さんじゃなかったら、悪人だぁ、大嫌いだぁ
と思って終わりなんですけど。
知っている役者さんだったので、その悪人っぷりがカッコ良くて
溜まりませんでした。
いや、ホント、凄いよ。有川さん。


この作品を今年最後の観劇にしたかったなあって
思うくらい、いい気分で劇場を後に出来ました。
でも、あと2本観るつもりです。
「VERSUS」は29日までやっています。
最後の芝居がダメだったら、口直しにもう一度
「VERSUS」を観てもイイかもなあ、と思っています。