またまた『燃えよ剣』

ある方からチケットを譲り受ける事が出来まして、3回目の明治座燃えよ剣』を見て来ました。
司馬遼太郎の『燃えよ剣』は前夜やっと読み終わりました。たんたんと描かれているのに沖田の死に胸が痛み、土方の最後には七里は出てこない事が判りました。
そんな訳で、原作と芝居の両方の感想が入り混じった記事になります。


あ、でもきっと芝居の感想がメインになっちゃうなぁ。
1階9列目上手よりの席で、今迄で一番役者の顔が見えていい席でした。19日ぶりの上川さんは痩せていました。そりゃあ、3時間強の舞台を1日2回、丸々1ヶ月ですものね。
うわさには聞いておりましたが、お雪さんとの親密さは増しているようで(もちろん、他の共演者の方々とも、ね)Kissシーンがあるのは、初日からちょっと「きゃあぁぁ」と思っていましたが、ディープだとは知らなかった…ちょっと「いやぁ〜〜!」と心の中で悲鳴を上げていました。
そんなコトは置いておいて、芝居は凄く良くなっていました。もしかしたら私が3回目なことや、ちゃんと原作を読んで話が細かく判っていることも起因しているとは思いますが、とにかく目が離せない、飽きない。上川さんの表情や微妙な芝居の変化も見逃せなくて飽きないけど、もともと脇を固めている役者さんたちも芸達者な訳じゃないですか。「あ、この人前回見逃していたけど、ここでこんな芝居やっているんだ。ここでもう次のシーンへの伏線が始まっているんだ」って発見がいっぱいあるんですよ。
脚本についても、このセリフとこのセリフが実は対になっているのね…とか、細かい所が見えてくるから面白い。もちろん原作と比べて、ここがオリジナルでここがエピソードを膨らませたところで…ってね。


今回は藤堂平助役の京晋裕さんの殺陣とか、藤堂の心の変化が見られました。(見ようと思って見ていたんじゃなくて、たまたま目に入ってきたんだけど…)藤堂の最後のセリフがずっと腑に落ちなかったので、どうしてあのセリフになったんだろう…と思って。土方に抱かれ「新撰組だったのに、新撰組に斬られました」と言って、死んでいくんです。新撰組から御陵衛士となって、その御陵衛士では近藤・土方を討つという計画が上がっていたのにもかかわらず、先に書いた藤堂の最後のセリフ。藤堂は別藩になっても新撰組のつもりだったんだろうか、近藤・土方を討つ計画も知らなかったのだろうか?
残念ながら、そこの心情は今回も見極める事は出来ませんでした。(新撰組から御陵衛士への心の移り様は見てたんだけど)余談だけど、このセリフで笑う人って、どういう感性しているんだろう?


シーンが対比しているんだと発見できたのは、先に書いた藤堂の死のシーンから。
多摩の試衛館時代から一緒だった藤堂の亡骸を抱いている土方のことろへ七里がやってくる。が、土方は刀を抜かない。七里も「剣に生きたら、剣に死にたいよな」と言い、一度抜いた剣を鞘へ収め、去ってゆく。剣で死んだ藤堂を抱きながら、土方もつぶやく「剣に生きたら、剣に死にたいさ
その後、女優陣の”ええじゃないか”シーンが少し挟まれるが、すぐに薩長の騎兵隊の戦闘シーンで度肝を抜かされるんですよ。そして、やはり試衛館から一緒だった井上源三郎が銃弾に倒れる----------。
土方の最後が、剣ではなく、銃に撃たれて死ぬ事が判っているから尚更、この2つのシーンをすぐに対比して持ってきていることで、悲しみがストレートに伝わってきました。


3幕はもう早い段階から涙がゆっくり静かに止まらなかった。やっぱり、近藤との別れのシーンは、辛すぎる。風間杜夫さんが、立ち去りかけた花道で、土方を振り返りそうになりつつ、でも振り返らずに去ってゆく姿と、見送る上川さんが近藤の置いていった剣を拾う姿が、忘れられない。このシーン、この暗転の仕方、暗転の時間、絶妙だと思います。
そして、最後のただ一人官軍の前に現れた時から、上川さん扮する土方の姿が凄いんですよ。本当に鬼気迫るというんでしょうか?土方が乗り移ったかのような、というんでしょうか?なんて言ったらいいんだろう、その迫力にもう、とにかく涙が止まらない状態。凄い良かった。
初日、これで12000円?キャラメル2回観れるのに!!なんて、ちょっと不満に思っていたのが、吹っ飛びました。
良かった。観に行って、良かった。心の底からスタンディングオベーションしました。
劇中、使われていた上妻宏光さんのCDを聞きながら、書いているので、また思い出して、泣けてきちゃいました。


冷静になろう。
もう一人、役者さんの話をしたかったの。この間も書きましたが、2年前の舞台で「惚れた」と思った流山児事務所の若杉宏二さん。2回見ても、若杉さんの演じている役が1つしかハッキリわからない、と書いていましたが、今回は座席が良かったので、ちゃんと全部判別出来ました。そして判ったんですけど、彼はカメレオンみたいに役ごとに
イメージというか、カラーというか、とにかく見事に違うんですよ。主役も張れる方なのに(小劇場だけど)脇役に徹して、決して出しゃばらず、演じ分けている。。。器用な役者さんなんだなぁ、と改めて感動しました。今後は若杉さん情報をちゃんとチェックして、出来れば小劇場で主要キャストで観たいなぁと思いました。


あれ?原作の感想は書いてないですね。思い出したら、また書きます。