『コントラバス』

演劇集団キャラメルボックスの看板役者・西川浩幸さんの
一人芝居『コントラバス』を観ました。


なんと今年で役者生活20周年。
記念すべき一人芝居だったんですよ。
そして、チケットは完売!!
当日券なし。


なんでか私、西川さんの一人芝居、きっと抱腹絶倒なコメディに違いない!!
と勝手に思い込んでいましたが、違いました。


タイトルのとおり、オーケストラのコントラバス奏者が
ひたすらしゃべる一人芝居。
しかも設定がドイツの1970年代。


冒頭、コントラバスがオーケストラにとって、
いかに必要不可欠か
コントラバスがどんなに素晴らしい楽器か、
それからコントラバスの歴史、
コントラバスの為の曲について
ずーっとしゃべっているんですよ。
耳慣れない(興味の無い?)音楽の話と
西川さんの独特の心地よいトーンのしゃべりに
つい、ウトウトと睡魔に襲われている人が周りにチラホラと。


(このお芝居は、客席前方の人と後方の人では
 きっと温度が違うと思いました。
 前の席の人は、西川さんが話しかけたりしていたので
 睡魔が襲ってくることもなく、楽しかったと思うんですよね。)


頑張って、ギャグを入れたり、ひとつの話が終わると
テンポを変えたり、演出が頑張っているのは判ったんだけど
私の隣の席の人は、おそらく30分くらいで席を立って出てゆかれました…。


私は、なぜ西川さんが、役者としての節目にこの芝居を選んだのか
見極めてやろうと思っていたので、睡魔との戦いは一回ありましたが、
おおむね面白く観劇できました。


結局、ちょっと卑屈な男の孤独さというか、
淋しさというか、焦りというか、妄想というかが語られて
誰もが、実はそんな気持ち知っているよ、
抱えているよ、判るよ、というような話(?)でした。


でも、今の私はあんまり感情移入も感銘も覚えない話。
(タイミングが悪かった)


最後、仕事に出かけるところで終わるんですよ。
オペラの演奏に。
そのオペラで彼の恋したメゾソプラノ歌手が
初めてちょっと大きな役を演じる。
自分はこんなに彼女が好きなのに、彼女は自分の存在を知らない。
今夜、彼女の出番に名前を叫んだら、オーケストラの仕事は
クビになるだろう。
でも、彼女には自分の存在を知ってもらえる。
そんな妄想を延々しゃべって
「今夜、僕は彼女の名前を叫ぶのだろうか、
 それは、その時にならないと判らない。」
そう言って、部屋を出て行くんです。


きっと、彼は彼女の名前は叫ばない。
色々不満はあるだろうけど、今の生活を続けていくだろう
最初はそう思ったんです。
(今、自分がネガティブなのがよく判る…。)


でも、カーテンコールの西川さんの笑顔を見ていたら
(単に芝居を終えたので晴れやかな顔をしていただけ、
 だとは思うんだけど)
彼は、彼女の名前を叫んで、今までの自分と決別したんじゃないかと思えてきた。
西川さん、いい顔をしていました。


カーテンコールは2回。
2回目は、おいおい皆そんなに良かったの?
キャラメルノリで拍手してないかい?
と私は、ちょっと引いていたんですけどね。。。


帰りにパンフを読んだら、
この脚本ドイツでは大変ヒットして有名らしい。
翻訳物のお芝居はある程度、下準備していかないと
難しいかも…。


帰り道、前を歩いていた二人連れは
クラシックに明るいようで、芝居の中で出てきた
ワーグナーの下りなどについて楽しそうに話していて
ちょっと羨ましかったです。
大人の教養として、クラシックの知識もある程度
持っていたいなぁ。
最近、クラシックづいているなぁ、と思うkikimimiでした。
http://www.hakujuhall.jp/top/concert/sub12/index.html#hinishikawa