『真昼のビッチ』

俳優・長塚京三氏のご子息・圭史さんが主宰されている
阿佐ヶ谷スパイダースを観に行こうと友達に言われて
有名だし、一回くらい観ておくか、高橋由美子主演だし、
と思ってチケットを取ってもらいました。


ところが、題名とか他の出演者とかスッカリ忘れてしまっていて
友達と開演前に「明日千秋楽のはずなのに、
ちっとも芝居の評判聞かないね。おかしいね」
いいも悪いも評判聞かないということは、どうでもいい芝居なのか!?
「きっとコメントしづらい重い芝居なんだよ」
といい加減な会話をしていました。


帰宅してから調べたら、いつも芝居の評判を確認している
サイトでもちゃんと感想は上がってきていました。
私が見逃していたんですね…。


客席も空席が目立っていたので、
高橋由美子以外にも芸能人出ていたはずなのになんで!?
やっぱり、あんまり良くない芝居なの?
と思ってしまったのも一因なんですよね。


でも私の「コメントしづらい〜〜」のセリフは見事に当たっていました。
友達も阿佐ヶ谷初見で「どうもシュールな芝居をする所らしいよ」
と教えてくれましたが、そうでした。


タイトルで判るように、
気のふれた妹と二人生きていく為に
体を売っている女がヒロインの救われないお話です。
救ってくれそうなとってもいい人が現れるのに
自ら不幸な選択をしてしまう。


 幸せになると、不安になるから
 不幸な方を選ぶの。
 不幸な方を選んで生きるのが楽なの。
 不安に襲われないように
 より不幸な方を選んでしまうの。
 そんな生き方しか出来なくなってしまったの。

 
明日で楽なので、思いっきりネタバレしますが
気のふれた妹は、正気に戻ります。
でも姉の「あやまらなくちゃ。
不幸な事は全部あなたのせいにして、
考えないようにして生きてきた。
あなたが治らないように評判の悪い医者に通ってきていた。
あなたが治っても喜べない。
どうやって生きていっていいか判らない」
というセリフに再び発狂してしまいます。
その妹と自分の境遇に対して、甲高く狂ったようにひたすら笑う姉。


高橋由美子さんはやっぱり可愛い&可憐。
そして卑屈な笑いは不気味で、殺気を持って人を殴り倒す姿は怖くてカッコいい。


気のふれた妹を演じていたのは馬渕英里何さん。
アイドル時代から演技派と言われていましたが
ラストの気が触れた演技はよだれも垂れていそうで凄かった。
(本当によだれ垂らしていたかもしれないけど、見えなかった)


それから、渡辺いっけいさんと高田聖子さんが出てきてビックリした。
(チケット取ってもらう時は豪華キャストだと知ってたんだけど、本当に忘れてて…)


橋本じゅんさんにはパンフ見るまで、全く気付かなかった。
だって、今まで見ていた舞台のイメージと違う役だったんだもん。


メチャメチャ格好良くて素敵だったのが千葉雅子さん。
後でパンフ読んで、千葉さんの為に描かれた脚本でもあったのね、と納得。


感想はですね。
ちょっと鼻をすすっている音が劇場内でチラホラしていたんですが
私はこんな話じゃ泣かないぞ!です。


とことん不幸で絶望的な話を描いて、生きていく事の困難さと
そんな境遇でも生きてゆこうとする人間の力強さに
泣かせるという手法はあります。
実はその手の話は好きなので、結構私も泣く方ですが
この話では、泣かそうというか、そういう手法で狙って描いたのが見えてしまって…。


ラスト、妹が姉の告白を聞いて再び発狂したシーンで終わらせておけば良かったのに
(ソコで私には充分、妹が正気のまま狂ったフリをしたのが理解出来たのに)
エンディングで、一瞬妹が正気のような行動をして
姉が固唾を呑んで見守っていると、
再び発狂している姿に戻って、安心させるところを見せるのは蛇足。
(ソコまできちんと見せないと、
 姉の為に再び発狂した演技をしている妹の哀れ、
 姉妹でそのような依存の仕方でしか生きていけない哀しさ
 を観客に理解してもらえないと判断したんでしょうね)


本当に発狂したのか、演技なのか、
見ている観客にゆだねるラストの方が良かったのになぁ。


でも悪くない芝居でしたよ。
結構タラタラ不満を書いといて、と怒られそうですが
キャストは豪華だし、いい演技していたし
2時間半あったのに全く飽きさせなかったんですよ。
もしかして、ちょっと長い?
とは思ったけど、本当に時間見て2時間半経っているのに
ビックリしたくらい。
今度は豪華キャストではない、
阿佐ヶ谷スパイダースの本公演(?)な芝居で力量を測ってみたいです。
http://www.spiders.jp/as/bitch.asp