『カフェー小品集』

カフェー小品集 (小学館文庫)
嶽本野ばらさんの『カフェー小品集』を読み終えました。


映画『下妻物語』から原作小説へ
そして”嶽本野ばら”という人物に興味を持ち
二冊目に『カフェー小品集』を手にする事となりました。
(本当はデビュー作『ミシン』が読みたかったんだけど
 たまたま入った本屋になかったんだな。)


発表当時実在していた日本各地のカフェーを舞台にした短編集です。
間違ってはいけないのが、
スタバやシアトルカフェのような今時のカフェではなくて
純喫茶というのかなぁ、
中には名曲喫茶と呼ばれるような歴史あるカフェー(喫茶店)が12軒、
取り上げられている小説です。


結論から言うと、私は嶽本野ばらさんの作風が好きです。
これからももっと読んで行きたい作家の一人になりました。


 特に好きな作品と感想を箇条書き。
 「2.品性のある制服と、品性のある歯車」フレンソワ
 ”訳もなく不安になり泣いてしまいますか?”に胸を衝かれ
 少し歯の欠けた歯車という表現に鼻の奥がツーンとしました。
 「8.嘘の風景と或る乙女について」クラシック
 失踪した彼女の嘘について、いつまでも考えてしまう。
 「10.20年代のレコードをマグネチップスピーカーで再生する理由」ヴァオロン
 運命と必然の違いについて教えられました。
 運命の出逢いと必然の出逢い、私はどっちを選ぶだろう。


今時のカフェも好きですが
古めかしい喫茶店も味があっていいですよね。
昔、新宿のとあるビルの喫茶店でウェイトレスをしていた事を
思い出しました。
木製のテーブルに木製の椅子には赤い布が張られていて
扉にはステンドグラス、室内は薄暗く、古めかしい形のランプや
同じく古めかしく手動のコーヒーミルが所々に配置されている。
ウィトレスが持つトレイは銀盆。
なんとなく子供は入れないイメージで
大きな声より、小さな声でひっそりと静かに話すのが似合う空間。
バイトをしていた間、私も喫茶店を経営するのもいいなぁと
夢見てしまうくらい素敵な空間でした。


チェーン店だったので、小説に取り上げられる事はないでしょうが
チェーン店でもあれだけ、いい雰囲気だったのだから
小説に取り上げられているカフェーはどんななんでしょう。
小説を片手に訪ねてみたくなりました。