『不自由な心』

不自由な心 (角川文庫)
白石一文さんの『不自由な心』を読み終わりました。
本屋で平積みになっていて、店員の紹介文とか
”不自由な心って何やねん”っていう想いから
一ヶ月くらい前に手にしたんですけど、
間に他の本を読んだりして、なかなか読み終われませんでした。


お陰で、5本小説が入っていたんだけど、
最初の話はうろ覚えです。
著者が、表題の『不自由な心』のテーマを判りやすくするために
他の4篇を一緒に本にしたから、最初から読んでくれと
あとがきに書いてあったので
最初から読んだけど、途中で他の本に浮気したりしたせいで
あんまり共感できなかったかも…。


私が印象深いのは『夢の空』
主人公が出張の帰りの飛行機に乗ろうとして、
搭乗口に向かう人の姿が一瞬白装束に見えたところから
”あ、この飛行機落ちるな”って読者に思わせる
判りやすい導入部分。
(ちょうど7月最初の帰省前に読んでいたので
 ”縁起悪いよ”とも思っていた。)
落ちる飛行機から、主人公が最後に携帯電話でかける相手とは−−。
ちょっと泣いちゃいましたね。
やっぱり死ぬ直前に思い浮かぶ人、会いたい人が
本当に好きな人だよね。
心は正直だ。
でも、ふっと彼の奥さんの立場になって考えると
これがまた哀しいんだな。
最後に電話を掛けるのは、奥さんでも娘さんでもないんだね。


で、他の4篇もそんな話です。
30代後半から、40代前半の男性が主人公で
奥さんではない、彼女が居る話。
結婚した後で、もっと素敵な人に出会ってしまう事もあると思うけど
4篇ともそうだと、食傷気味です。
筆者の居た世界では、奥さん以外にも彼女がいるというか
適度に遊ぶのは当たり前の世界だったんだろうなーっと。


いつまでもラブラブカップルのままで居られないのは判っているけど
未だ結婚していない私は、やっぱりまだ夢見ている部分があって、
こういう話はあんまり好きじゃないなあ。


きっと結婚していて、仕事でも家庭でも背負わなければいけない物が多くて
それで心のままに生きられない中年男性の方の共感を得る話ではないでしょうか。
奥さん以外の女性に安らぎとかを求めるのも
或る意味
男性の方がロマンチストと言うことで、無理矢理自分を納得させてみました。