『暗黒童話』

暗黒童話 (集英社文庫)
乙一の『暗黒童話』を読みました。

 不幸な事故によって、左目と記憶を失くしてしまったヒロイン。手術で他人の眼球を左目に入れてから、その左目が映像を見せ始まる。自分の失くした記憶(過去)の代わりに、その映像に救われるヒロイン。だが、ある日その映像が、左目の持ち主の見た物であることに気付き、彼の住んでいた町へ向かう。

私があらすじを書くとこんな感じでかなりネタばれ?この話は結構グロいです。冒頭と真ん中に物語を彷彿させるような暗黒童話「アイのメモリー」があるのですが、この童話のグロさはまだ序の口で受け入れられるんですけど。

第二章になって、出てくるシーンが私にはダメでした。えーっとですね。犯人側(?)の回想というか考え方が割と淡々と描かれているんですけど、いわゆる理解できない、したくない殺人犯とかっているじゃないですか? そんな人の思想とか視点を描かれても、やっぱり理解できなくて、気持ち悪いんですよ。おかしいこの人、近寄ってはいけない。危険信号鳴りっぱなし。

それでも読み始めた以上は、最後まで読まないとスッキリしないだろうし、記憶を無くて居るヒロインがどうなるのか気になって。

そうそう、ヒロインが左目を失くしてしまった事故もちょっとゾッとします。本当にそんなコトがあるの?って。よく噂話であるじゃないですか、耳から糸が出ていて、引っ張ったら視神経で、眼が見えなくなっちゃったって。ああいう、ちょっとゾッとする事故です。 (でも多分、実際にはない事故だと思うんだけど…)

そのヒロイン、事故前は勉強もピアノも出来て明るくて、クラスの中心人物だったというのに記憶を失くしてしまったら、勉強もピアノも出来なくて、暗い感じになってしまい、
皆に常に「前の自分」と比較されて「ごめんなさい」と思いながら、肩身狭く過ごす毎日。人間って記憶(過去)に作られているんだなぁと感じました。自分の事が全く判らないって不安な状態ですよね。それでも誰にも言わず、左目の映像を確かめに向っていくところが凄いヒロインです。

ラストはちょっと泣きました。なんだか淋しくて。

今まで読んだ乙一の作品で、私が魅かれた“不思議な力を持つ人物(又は不思議な出来事)”と、“とっても淋しい人間が出てくる”という点は変わらないのですが、不思議な力を“素敵なコト”に使わなかった話なのです。不思議な力を持った本人の持論では、もしかしたら“素敵なコト”に使っていたのかもしれないけど…。(あーでもマッドサイエンティストとか、そういうものかな?)

とりあえず、しばらく乙一のホラーは読みません。本当は全部乙一作品を制覇したいのだけど、ホラー作品が多いんですよね。『平面いぬ』『天帝妖狐』『夏と花火と私の死体』『GOTH』etc グロくないホラーだったら読めるんだけどなぁ。

しかし、グロい話って、それだけ衝撃度も強くて、しばらく忘れられなくなりますね。読み終わって出かけるので電車に乗っていたら、『暗黒童話』の自分が気持ち悪くなったシーンばかりが、想像した映像つきでフラッシュバックして困りました(;´д`)トホホ