『掌の中の小鳥』

加納朋子さんの『掌の中の小鳥』を読みました。掌の中の小鳥 (創元推理文庫)
やっぱりこの作家さんは大好きですね。超お勧め作家さんです。
誰も死なないミステリって素敵じゃないですか?

推理小説を夢中で読んでいたことがあったんですけど、ある日あまりにも簡単に人が死んだり(特に殺されたり)することに、小説の中とはいえ、慣れてしまったらいけないと感じて。それから「殺人事件」系の小説は読まない方向になっているのですが、謎解きは好きなんですよね。自分で謎が解けることはないんだけど「あ、そうだったのか」と思わせられること、作家の見事な複線に唸ることが好き。

日常生活で起こるミステリを爽やかに、時に切なく描かれる加納作品は絶品です。

今回の収録作品は表題作の「掌の中の小鳥」「桜月夜」「自転車泥棒」「できない相談」
「エッグ・スタンド」。
それぞれの話も独立して読めますが、連作短編集なので、読み進むごとに男女の出逢いから、その付き合いが進んでゆく経過をラブストーリーとして楽しめます。

一番印象的なのが表題作の「掌の中の小鳥」。主人公の大学時代に親しくしていた女性の絵が何者かによって汚されるのですが、その女性の心の揺れがなんというか、上手く言葉に出来ないけど、分かる様な気がして。
それから「手の中に一匹の小鳥を隠し持って行って、賢者にこう言うんだ。『手の中の小鳥は生きているか、死んでいるか?』って」という話をする下りがあるんですが、賢者の答えというのがいいんですよ。本当に!