『博士の愛した数式』

小川洋子さんの『博士の愛した数式』を読みました。博士の愛した数式
こちらの小説は色々な雑誌でオススメとしてかなり取り上げられていましたので、いつか是非読んでみたいとチェックしていたのです。
演劇集団キャラメルボックスの2005年公式ハンドブックでも数人の役者さんが書名を上げてられていたことも、興味倍増。)
しかし、タイトルは覚えても、推薦文に記載されている内容を忘れてしまうのは、どうしてでしょうね。今回も数学者が出てくるということしか覚えていませんでした。
実際は「僕の記憶は80分しかもたない」というメモを背広に貼り付けた老数学者が出てくるお話です。


家政婦である主人公が派遣されたのは、交通事故により80分間しか記憶を留めておくことが出来なくなった老数学者のお宅。彼とコミュニケーションを取れる内容は数字(数式)に関することだけで、大変苦労を要されるが、そのうち主人公の息子(博士が”ルート”と名付ける)を交えて温かな友情が育まれていくという話。


読んだ方がほぼ口を揃えて言っているのは、数字(数式)の美しさにこの小説を通じて気付かされたことでしょうか。友愛数とか、双子素数とか、学生時代習いましたか?(私は覚えていないんですけど)
博士が数字を愛していて、その数字について語るのが大変詩的で美しく、こんな先生が学生時代に居たら、もっと喜んで数学を勉強していただろうなぁと思ってしまうのです。
(ちょっと好きな数学の先生が居たことがあるので、当時は数学ドリルを一生懸命解いて、問題が解けたとき、他の教科よりもスッキリ気持ちいいのは知っているんですけど。数字が「美しい」と思ったことはありませんでした。)


「僕の記憶は80分しかもたない」というメモが登場すると切なくなるのですが、その障害をメインに扱うのではなくて、
(毎朝、そのメモを読むときの博士の気持ちを想像すると、何も言えなくなりますが)
博士をいとおしいと思う気持ち、世界を数字で解き明かすことが出来る可能性、及び解明されていない謎があるという素晴らしさに溢れていて泣けてきます。


老若男女捕まえて、「面白いから騙されたと思って読んで」と久しぶりに言いたくなる小説でした。


正直言うと、後半一気に読んでしまったため「πi+1=0」の数式は完全に理解できていません。久しぶりに素数とか約数とか思い出して、後半は頭が疲れていたようです。なので、またゆっくり読み返したいと思っています。何回でも。


検索していたら、この作品が映画化されることが判りました。博士役が寺尾聡さん、イメージピッタリです。http://www.sanspo.com/geino/top/gt200411/gt2004110206.html