『少年計数機』

石田衣良さんの『少年計数機〜池袋ウエストゲートパークⅡ〜』を読み終わりました。少年計数機 池袋ウエストゲートパークII

4編収録されているのですが、最後の『水のなかの目』が読後、重くのしかかってきて、しばらく忘れられそうにありません。


『銀十字』では、ひったくり犯にとってハッピーエンド*1になるようなラストでいいの?と訝しく思ってしまったのですが、『水のなかの目』のラストはマコトが未必の故意*2を犯していて後味が悪い。この話は、死体が多すぎ。

作中で「千早女子高生殺人事件」をマコトが調べはじめるところから始まるのだけれど、おそらく実際にあった事件をモチーフにしており、その事件はきっと私が高校時代に起こった事件(場所は池袋ではない)で、とても印象強く記憶されている。小説の描写を読みながら、当時の事件の報道を思い出し、その人間を人間と思わない所業に気分が悪くなった。
マコトは

あんなに恐ろしいことなのに、おれにはやすやすとそこでおこなわれていた事が想像できたから。獣のようなガキなんて、自分とは別な種類の生き物だとすましてはいられなかった。二階の闇は、誰の心のなかにもある。

と書いているけれど、私はやすやすとは想像できない。私の中にも闇はあるけれど、その闇の種類にこんな所業は入っていない。
もちろん、人間の子供が「他者を自分と同じ痛みを感じる生き物なんだ」と理解しないうちに行う行動がどんなに野蛮で残酷かは知っている。(例えば、とんぼの羽をむしったり、トカゲの手足をバラバラにしたり、という行為だけれど。)


なんにせよIWGPは、軽快で爽快な展開ばかりでは、ありませんってことです。現実世界と同じように。


話は、変わりますが、ビデオをレンタルしようと思っているのに、まだレンタル屋の会員にもなっていません(^^;;;
それから『妖精の庭』でマコトが書いている言葉が凄く残っているので、忘れないようにメモしておく。

テレビを見るのって、ゆっくり自殺することなのかもしれない。

でも私は当分テレビ(主にドラマ)っ子を辞められません。

*1:何をして生きていけばいいのか判らない若者に多少なりとも興味があることへの扉を開くキッカケを与えたラスト。これは戦争を体験し、敗戦後の日本を生き抜いてきたジジイの手腕であり、安易に「今の若い者は」という言葉を吐くのではなく、今の時代と若者の未来を思った采配に懐の大きさ、暖かさを感じる。このような大人が増えればいいのに。私もこのように年を取れたらいいのにと思う。

*2:実害の発生を積極的に希望ないしは意図するものではないが、自分の行為により結果として実害が発生してもかまわないという行為者の心理状態。