『ニッポニアニッポン』

阿部和重さんの『ニッポニアニッポン』を読み終わりました。ニッポニアニッポン (新潮文庫)
雑誌で紹介されていた時にタイトルだけが妙にインプットされてしまっていたので、手にとってみました。
トキの学名って「ニッポニアニッポン」なんですね。それじゃあ、日本にトキが居なくちゃ、なんだか納まりが悪い。


主人公・鴇谷はその名前から、トキに対して物凄くシンパシーを感じており、トキを檻から解放しようと動き出すというお話。
トキ問題についてお勉強させられました。
確かに中国からトキを連れてきても、日本のトキではないよね!?とは、なんとなく思っていましたが、まあトキにシンパシーなんて感じていない私からしたら、日々どうでもいい話題で、関心がなかったんですけど、主人公はそうはいかなくて。
家族から、故郷から離れた街で引き篭もり、どんどんトキの檻からの解放運動「ニッポニアニッポン問題の最終解決」へ向けて、のめりこんで行く。
何故そこまで傾倒していくのか、彼の背景が後半に明かされてきます。
(最初「本木桜」と出てきても、「八重桜」とかと同じように桜の種類だと思ってしまった(^^;;;)


前半は、トキのニュース関連の引用があるため、普段読みやすい小説ばかり読んでいる私には消化しずらかったです。
後半、彼の思い込みの激しい性格とそこから引き起こされた問題とか、絶望とかはなんとなく理解できましたけど、特に鴇谷に同情することもなく淡々と読みました。(作者自身が淡々と書いているというか、突き放した視点で書いているというか)


エンディングで、鴇谷と同じく引き篭もりの男性が登場したのは、面白かった。ああ、こんな人間が今、いっぱいいるんだなぁって。


ちなみに、私はずーっと「ニッポニアニッポン問題の最終解決」の計画は、なんらかの事情で決行しないで終わるものと思いながら読んでいました。
以上