[読書]『ハッピー・バースディ』

ハッピー・バースディ

ハッピー・バースディ

久しぶりに新井素子さんの小説を読みました。
十代の時に『あたしの中の…』を読んで衝撃を受けたんですよね。『ひとめあなたに』は大好きな作品。
なのに久しぶりだったせいか、今回は新井素子さんの特徴的な文体が、なんだかとっても読み難く感じました。


突然文学賞を受賞して有名になってしまった女性作家と偶然人生最悪な時に彼女と出会ってしまった若者の話が、章ごとに交互にそれぞれの視点で進んで行きます。
前半は前述したように読み難くて、なかなかストーリーに入り込めなかったのですが(それに女性作家にいやがらせする若者に嫌気がしたし)、後半は女性作家の人生に重大な展開が起こり、二人はどうなってしまうのか怖くてドキドキしながら読みました。
それでも、素子さんのことだから、悲惨な終わり方にはならないよねぇと信じていました。


ちなみに後半、若者・祐司は「もの凄く正直に言えば、今でも、俺、あの電話がそんなに酷いことだったとは、実は思えないんだ」と言っているんだけど、私はそうは思えない。女性作家・あきらが復習を考えるのに充分に値すると思う。そんな私はあきら的な発想ぶっ飛び&下手に追い詰めると危ない系人間なんだろうな。


小説を読み終わって、「みんなが演劇をすれば、犯罪者は減る」というようなことを誰かが言っていたことを思い出した。怒りも悲しみも憎しみも、殺意も舞台上で仮想で体験できて昇華できるから、というのが理由なんだけど、これって当たり前だけど、小説家にも言えるのね。多分、音楽や絵画でも、何かを表現する場を与えてあげればいいのかもしれない。
それで、本当に犯罪が無くなればいいんだけど。