『GOTH−リストカット事件』

GOTH―リストカット事件

GOTH―リストカット事件

乙一さんの『GOTH−リストカット事件』を読み終わりました。
乙一さんは『さみしさの周波数』や『きみにしかきこえない』『未来予報』などを先に読んでいて、いわゆる“せつない系”の話を気に入って、好きな作家として挙げておりますが、どうやら私は“暗黒系”の小説はダメらしい。
(昨年『暗黒童話』を読んで、今年3月には日記に書き忘れてたけど『ZOO』を購入しています。)


苦手な猟奇的な部分はサラッと読み流してしまえばいいのだろうが、どうしても想像してしまうのです。自分でイメージしてしまった映像は、他人によって与えられた映像よりもインパクトが強くて後々まで残ってしまう。


『GOTH−リストカット事件』では、「死」だけがリアルであると感じる「僕」とクラスメートの森野夜が関る事件の物語が6つ収録されています。冒頭の『暗黒系』の猟奇的殺人の描写を受け付けられず、そのまま全編読み飛ばし気味に読みました。ダメだったと書きながら、なんなんですけど、敢えて好きな話を挙げるなら、5本目の『土』と6本目の『声』かな。


「あとがき」を読んで、乙一さんの“せつない”小説家として期待を集めることに対しての気持ちを知り、それと違うことに挑戦していこうという考えが分かって良かったのです。
が、あんなに「せつない」話を書く心と「死(それもどっちかというと猟奇的な)」を記号のように扱える乙一さんが良く分からない。しばらく「乙一の小説が好き」って言わないようにしよう。でも、乙一さんの小説は、これからもたまに読むだろうな。分からないけれど、「暗黒系」は読んでちょっと後悔するのだけれど、たまに抗いがたい引力を発揮している、と思う。