『死にぞこないの青』

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)

乙一の『死にぞこないの青』を読みました。ホラー系(グロイ?)なのかと、ちょっと覚悟しながら読んだのですが…いや、ホラーと言えば、ホラーなのかもしれないのだけれど。
思っていたのと違う小説でした。


小心者の僕は、小学5年生になり、新しく大学を出たばかりの先生が担任になったところ、ちょっとした誤解から、先生から何かと目をつけられ、注意を受けるようになり、クラスメイトの向ける目も違ってきてしまう---その上、真っ青な肌をした不気味な少年が見えるようになって……という話です。


ちょうどTVドラマ『野ブタ。をプロデュース』初回を見たばかりだったので、そのイジメシーンとダブってしまい、生々しかったです。
ドラマよりもこの小説のイジメの方が陰湿で、底が見えなくて、主人公が社会で江戸時代の身分差別について知り、自分の境遇を思うところで胸を衝かれました。
なんとなく通り過ぎてきた日本の歴史だったのだけれど、人間の根幹にある差別意識について、その奥深さについて、この小説でやっと気づいたというか…(気づくのが遅すぎなんだけど)


ラストは、主人公が取り返しのつかない事をしてしまうのではないかとハラハラしました。
主人公の最後の決断に救われました。
(単純に「救われた」とか「良かった」とか言えなくて。もっと色々なコトを考えて、複雑な想いを抱えています。もう一度読まないと。)