劇場の暗がりで

とある女性雑誌で小劇場のお薦め劇団がいくつか紹介されていました。その中で「劇団桟敷童子」のこの秋の上演写真を目にした途端、あの狭苦しい劇場の濃密な空気、暗がりが脳裏に広がり、胸が締め付けられ、泣き出しそうになりました。


「好きな場所は?」と問われれば、真っ先に劇場の暗がりと答えるだろう。幕が上がる直前、客席で肩寄せあった人々の期待が最高潮に達するとき、舞台袖の役者・スタッフの緊張が最も高まるときの、あの暗がりがとても好き。
母のお腹の中に居るときのような、安心と緊張と期待感がある。


「kikimimiさんは、お芝居が無いとダメだから、きっと東京から離れられないよ」と言われたことがあった。
そんな事はない。TVドラマだって映画だって、娯楽はいっぱいあるのだから、大丈夫。そう思ってきた。


それに、キャラメルボックスは年に一度は福岡公演をやってくれるし、シアターテレビジョンだってある。(やっとスカパー!契約しました。)上川さんが出る舞台には、必ずお金を貯めて上京するつもりだし、劇場の暗がりなら、映画館にだってあると思っていた。


だけど、気づいてしまった。
私は小劇場の暗がりが好きなんだ。
映画館はCMで始まるし、真っ暗になるということはないんだ。
中劇場・大劇場では、空気の濃度が違うんだ。


桟敷童子の芝居が観たい。ジャブジャブサーキットの芝居が観たい。少年王者舘の芝居が観たい。
小劇場が観たくて仕方なくて、恋しくて仕方なくて、悔しくて仕方なくて、泣いてしまうとは…
…予想外でした。


(おそらく来年からの身の振り方が決まって、将来に対する不安がなくなったことと、再び東京に住むことは無いと確定したからだと思います。)